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立松和平の墓紀行 第3回 船の墓

立松和平の立松和平の墓紀行第3回は 那智の滝で知られる那智の補陀落渡海をテーマにした「船の墓」です。

 補陀落渡海とは生きながらの水葬で自らの身を海にて観音に捧げる捨身行です。
これまでに40件ほどが記録として残されており、そのうち半数以上が熊野那智で行われているようです。

補陀落の霊場としては那智の他に、高知の足摺岬、栃木の日光、山形の月山などがあります。

船の墓

  熊野の那智は、観世音菩薩の住む補陀落浄土とされている。また那智の海の遥か彼方にこそ、海上世界としての補陀落浄土があるとされた。本来の補陀落は南インドの海岸のポータラカにあるといわれ、中国では長江の河口付近に位置する舟山列島の普陀山がそうだとされていて、いずれ海の彼方の海上世界なのだ。
  那智の沖合いにある補陀落に、実際に行こうとした人がいた。那智の海岸線には補陀落山寺がある。この前の浜から、遥かな補陀落浄土をめざして補陀落渡海が行われた。

  寺の境内には、渡海舟が実物大につくってあった。雨や波を防ぐため屋形には檜皮が貼られ、その周囲には四門及び忌垣がめぐらしてある。出られないように外から釘で打ちつけ、内部には三十日分の食料と水と灯火の油と、法華経を積んだ。一度出航したなら二度と帰ることはできない。つまり、この舟は棺であり、墓ということである。永遠にそこにあるわけでなく、波の上に浮かんでまことに不安定なのだが、やがて確実に海中に沈むこの船のことを思うと、まことに痛ましい気持ちになる。だがごく稀には、沖縄の島に至ることもあったようだ。
  補陀落山寺の境内には、これまでの補陀落渡海僧の名を刻んだ石碑が建てられている。貞観十(八六八)年慶龍上人から、享保七(一七二二)年宥照上人まで、二十五人が数えられる。沖縄本島の金武の鍾乳洞の前にある観音寺は、そうした補陀落渡海僧日秀上人によって開かれたと伝えられているから、那智ばかりでなく他からも補陀落渡海僧がいたと考えられる。

  補陀落山寺の住僧のうち何人かは、臨終を迎える少し前に舟に乗せ、海に送り出されたという。これは海上世界に向かっての葬送であり、もっとはっきりいうなら水葬の一形態である。つまり、この船こそが、それらの僧たちの墓だということができる。
「平家物語」の『維盛入水の事』の巻には、補陀落渡海が出てくる。平維盛は那智の浜から補陀落浄土に向かって舟を漕ぎ出し、沖合いにある山成島にきた時、舟から跳びこんで入水し往生をとげたということだ。自殺なのだが、形式としては補陀落渡海の姿を借りている。補陀落渡海にことよせることによって、自殺にもかかわらず極楽往生をとげることができるとされたのだ。
熊野は不思議なところだ。熊野本宮(熊野坐神社)、熊野新宮(熊野速玉神社)、那智地大社(熊野那智神社)を参拝するのが熊野三山巡りである。
  熊野三山巡礼が人を集めるようになったのは、末法思想がさかんになった平安末期から鎌倉時代にかけてで、京都から皇族や貴族たちが列をつくってやってきた。「蟻の熊野詣」という。

  九十九王子と呼ばれる遥拝所が熊野古道の要所につくってあり、そこにくるたび経を読誦し、拝礼し、遥拝をくり返す。祈れば祈った分だけ、世俗の暮らしで身についた業を祓い清めることができるとされた。
  遥拝をつづけて本願の地の熊野本宮に至る頃には、業に汚れきっていた身も潔白となる。熊野本宮の証誠殿には阿弥陀如来がいて、そこに参籠すれば極楽往生まちがいなしとされたのだ。
  本宮にお参りをすませると、熊野川を舟で下っていき、河口の新宮で降りて熊野速玉神社にお参りする。速玉神社の本地は勢至菩薩である。ついで海岸の道を歩いて、観音菩薩を本地とする熊野那智神社にお参りする。人が往生して極楽浄土に向かう時、その人を迎えに来迎する阿弥陀如来の脇侍は勢至菩薩と観音菩薩なのである。人はここまで遥ばると旅をしてきて、きたる往生の折にはよろしくお願いしますと熊野三山に頼んでおくのである。
  後白河法皇は三十四回、後鳥羽上皇は二十八回、鳥羽上皇は二十一回御幸したとされる。

周辺の見所

熊野那智大社
  熊野本宮、熊野新宮などとともに熊野三山の一つです。熊野夫須美大神を主祭神とします。2004年7月1日、ユネスコの世界文化遺産に「紀伊山地の霊場と参詣道」の一部として登録されました。現在は山の上に社殿があるものの元来は那智滝に社殿があり滝の神を祀ったものだと考えられています。那智の滝は熊野修験の修行の地となっています。

青岸渡寺
  天台宗の寺院で西国三十三箇所第一番札所です。本尊は如意輪観世音菩薩で2004年7月に、ユネスコ世界遺産『紀伊山地の霊場と参詣道』の一部として登録されました。伝承では仁徳天皇の時代にインドから渡来した裸形上人によって開基されたといいます。同上人が那智滝の滝壺で得た金製の如意輪観音を本尊として安置したといいます。

立松和平のプロフィール

特集:正しいお墓のクリーニング

日本石材産業協会/全優石(認定 全国有料石材店)/全優石(埼玉支部)

  • お墓相談員
  • お墓ディレクター
    (1,2級)認定