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日本墓紀行「想」

第十一回 井上靖

戒 名

峯雲院文華法徳日靖居士

没年齢

83歳

所在地

静岡県天城湯ヶ島町
熊野山共同墓地

最寄駅

伊豆箱根鉄道 修善寺駅
バスで約30分
「湯ヶ島入り口」バス停下車

共同墓地内の詩碑

魂魄飛びて ここ美しき 古里へ帰る


伊豆修善寺からバスに乗る。川に沿って道は続く。周りの山々は深くもなく、ほどよく空を覗かせて景色を積み重ねていく。30分ほどで湯ヶ島に着く。

今回は「あすなろ物語」「蒼き狼」などで知られた小説家、井上靖の墓を訪ねてみた。
多くの作家が伊豆にゆかりを持つ。井上靖もそのひとりである。
しかも、小説の舞台になっているというだけでなく、5歳から13歳までの多感な時期をここ湯ヶ島で過ごした。

やがて、バスは湯ヶ島に、小学校前で降りる。墓へ行く前に井上靖が通っていた小学校を訪ねてみる。当時は昭和初期、むしろその頃の面影はなく鉄筋コンクリートの新校舎が待ち受けていた。
校門を入ったすぐのところに自伝的小説「しろばんば」の主人公、洪作とおぬい婆さんの像が建っている。地元の人の井上に対する誇りが伺われ、小学校に通う子供たちの心にもこの像は強く焼き付けられているのだろう。洪作とおぬい婆さんを後に湯ヶ島小学校から墓へと向かう。
墓は町の北側の小さな杜の頂にある。町や川を眺めることはできないが、いつまでも仲良く寄り添うようにそこにある。
竹や杉の木立の間を抜けると墓地が見え、井上靖の墓は玄関のように最初に待ち受け、石の道は優しく墓石へとつなげている。華美でも地味でもなく凛とそこに建っている。まさに井上靖、その人である。

強いもの、弱いもの、できること、できないこと。ここでのさまざまな経験とその吸収がその後の現代もの、歴史もの、エッセイなど多くの作品を生み出す土壌の地でもあった。

今回の墓を訪ねる前に「しろばんば」を改めて読む。そこには恋の芽生え、憧れ、嫉妬、裏切り、夢、挫折など洪作少年の目を通して描かれている。この湯ヶ島を舞台に成長していく様は上質の絵をぱらぱらと眺め るように流れていく。
連日のいじめや自殺、虐待などのいやな事件の報道ばかりが続く。教育の再考も叫ばれる。ふるさとへの郷愁などなど。生誕から100年、井上靖はどのように思っているだろうか。

時代を超えて「しろばんば」や「あすなろ物語」はそんな今だからこそもう一度読まれる本ではないだろうか。


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