2023年9月20日 水曜日
こんにちは。首都圏にて墓石の製造加工と墓所への据付施工工事という「お墓作りのお手伝い」をしております石材店の株式会社大塚のブログ「霊園とお墓のはなし」です。
先日、日本石材工業新聞に大塚の取材記事が掲載されました。こちらで紙面の様子と文章をご紹介させていただきます。
経営理念の実践を通してお墓文化の継承に貢献する
(株)大塚 大塚崇行社長・大塚裕基さんに聞く
埼玉県上尾市に本社を構える株式会社大塚は1938年(昭和13年)の創業以来、関東を中心に墓石の販売・施工、霊園の開発・販売・管理等で高い実績を持っている。同社では現在100ヵ所以上の取扱墓地・霊園を持ち、幅広い供養ニーズに対応しながら堅調な業績を見せている。同社の三代目大塚崇行社長(55歳)と3年前に入社したご子息・大塚裕基さん(28歳)に同社における現在の取り組みなどについてお話をうかがった。
自社工場も活かし多様なニーズに対応
― 御社は現在、埼玉県上尾市の本社と横浜にある支店とで営業展開されています。
大塚社長 弊社は今年で創業85年となります。初代の祖父・大塚裕康は技術にこだわる根っからの職人というタイプで、それを受け継いだ二代目の父・大塚順康が会社組織にして本社と工場をつくり、寺院墓地の開発・販売などに力を注いでまいりました。
そして私が入社して数年後に霊園開発へ参画する取り組みを進めていき、現在、取扱墓地・霊園は100ヵ所を超えるまでに至っています。
このところ新しい霊園を開発しにくい状況が続いている中、既存の墓地・霊園の再開発にも力を入れながら、一般墓地はもちろん、需要が高まっている樹木葬や永代供養墓などの開発・販売も進めているところです。
― 自社工場で加工できる体制も整えています。
大塚社長 当社の工場では既存墓石の手直しやクリーニング・メンテナンスのご依頼などにも対応しています。すべて外注での対応にしてしまうとコスト的なことや迅速に対応できないというデメリットも出てきます。
また当社は埼玉県のSDGsパートナー企業として登録しています。SDGsへの取り組みとして現在、廃石材を活用した商品開発も進めており、このような取り組みも自社工場があるからこそのものとなっています。
既存顧客とのご縁を大切に
― 御社にお墓づくりを依頼されるお施主は、どのような経緯で決められるケースが多いでしょうか。
大塚社長 いろいろなケースがありますが、お客様アンケートを見ると、以前から当社のことを知っていたという回答も多く、店舗・チラシ・ネットなど、様々な媒体を通して情報発信していくことの大切さを感じています。
また、アンケート結果には当社営業担当者の対応を評価いただける声も多く、そのようなお客様が知り合いの方をご紹介いただけることも少なくありません。
このほかにも、当社では毎年、既存のお客様へカレンダーと小冊子をお送りしています。当社では昭和42年から顧客管理を進めており、現在までに約2万7千人の顧客データを整えています。
既存のお客様から墓石のリフォームや納骨・追加彫刻のご依頼をいただくことも多く、既存のお客様とのご縁を大切に育んでいくことも重要な取り組みだと考えています。
経営理念を行動指針に
― 墓石業界も先の見えない状況が続いています。
大塚社長 難しい状況が続いていますが、このような時こそ自社の原点となる経営理念をベースとした視点が大切だと考えています。当社の経営理念は「私たちはお墓の仕事を通して、世の中の役に立ち、社会に必要とされ、お客様に喜んでもらえる仕事をする」。
たとえ、お墓の形態やスタイルは変わったとしても、亡き方を弔う文化を残していきたいという想いがあり、そのためにも、何より世の中の役に立つ取り組みを進めていくこと。その結果として、社会に必要とされ、お客様に喜んでいただける会社になることができれば、これからも会社を持続・発展できるものと確信しています。
この経営理念は私自身の生き方にも繋がっています。これまで地元の上尾商工会議所やPTA・教育委員会、業界団体の役職なども複数お受けしてきましたが、より良い地域や業界にしていくための活動も、経営理念の実践に相通ずるものがある。自分自身の言動・行動をもって、社員に対しても、しっかりと方向性を示していきたいと考えています。
幼い頃から石屋さんが身近に
― では、裕基さんに質問です。家業へ入るまでの経歴を教えてください。
裕基さん 私が小学生の頃、一階が事務所で、2階に祖父母が住み、3階に私たち家族が住んでいました。このような環境で育ったので、幼い頃から石屋さんの仕事は身近に感じていて、社員さんも家族のような感覚で接していただけていました。自分が生まれた時から知ってくれている社員さんもいて、いま一緒に働かせていただいていることは感慨深いものがあります。
学生時代は水球をやっていまして、高校時代にはインターハイにも出場しました。大学時代にバックパッカーをはじめて、インドや東南アジア、キューバなども旅しました。昔から好奇心は強いほうだと思っています。大学卒業後、家業とは違う仕事で経験を積みたいと思い、証券会社で3年間ほど働かせていただいた後、㈱大塚へ入社。
当社では1年目に工場での加工、本社での営業霊園管理・テレアポなど一通りの業務を研修させていただきました。2年目からは横浜支店で営業職を担当し、今年からは本社に設置されたマーケティング部で営業のサポート業務などを担当させていただいています。
前職の経験を活かして
― 前職での経験で、今に活かされていることを教えてください。
裕基さん 当たり前のことでしょうが、会社で働くという経験により、社会人としての責務であったり、上司・部下の関係、社内におけるチームワークの大切さなどを、身をもって学ばせていただいたことは、貴重な財産となっています。
また、証券業と石材業とでは全く業種が異なりますが、参考にできる取り組みはたくさんあります。例えば、社内での情報共有ひとつとっても、証券会社では上司の考えや営業に役立つ情報などを共有できるシステムが整っていましたが、当社では、そのようなものがなかったため、2年ほど前から全社員が見られる情報共有サイトを立ち上げました。
そこでは毎月1回、社長・専務・部長のメッセージを発信すると共に、営業時に役立つ情報などもアップするようにしています。この取り組みを始めてから、社員さんから「会社の考えや方向性が明確になり、働きやすくなった」という声も聞かれるようになり、立ち上げて良かったなと思っています。
― 大塚社長は、このアイデアを聞いた時、どのように思いましたか?
大塚社長 はじめは「出来るかな?」と思っていたのも正直なところですが、今では、このサイトがないと業務が滞ってしまうくらいに有効活用できています。改めて、若い感覚の大切さを実感しています(笑)。
振り返って考えてみると、自分も若い頃、父に新しい取り組みの提案をすることがありましたが、その際、父の返答はほぼ全てOKでした。自分が逆の立場になってみて、父の度量の大きさを感じると共に、自分自身も、そのようにならなければと思っています。
仕事に込める想い
― 今後の目標・ビジョンを教えてください。
裕基さん 石材業の仕事はお客様から感謝の言葉をいただける、とてもやりがいのある仕事だと思います。時代の変化と共に、お墓の形態は変わっていくかもしれませんが、大切な方を弔いたいという想いは、これからも変わらないはずです。
何かと厳しい話題の多い昨今ですが、お墓の仕事を通して、お客様や地域の方々に喜ばれるような取り組みを積極的に進めていきたい。できれば、社員の皆さんと一緒に、楽しくチャレンジしていけるような会社にしていけたら良いなと思っています。
大塚社長 もちろん目の前の数字的な目標も掲げていますが、広い意味で、お墓文化の継承に貢献できる会社になることが目標です。当社では父の代から、入社式の際、新入社員に向けて「冠婚葬祭」という言葉の意味を伝えています。
この四つの文字は人の一生における大切な節目を表す言葉で、端的に申しますと、冠は成人式などの儀式を経て一人前になること。婚は一人前になって結婚すること。葬は家族や親族の葬儀をあげること。祭は親や先祖を祀ること。
私たちの仕事である「祭」は、人の一生における大きな節目をサポートさせていただく、とても重要かつ意義深い役割を担っている。このことを胸に刻んで仕事に向き合って下さいというメッセージを伝えています。
お墓の簡素化といったことも業界の課題となっていますが、社員一人ひとりがこのような使命感をもって仕事に向き合っていくことで、お客様にも、お墓を扱う者の姿勢として伝わるものがあると思います。
私も今年で56歳になりました。これからも当社経営理念の実現に向けて日々努力していくと共に、次代の㈱大塚を担う人材育成・事業継承を視野に入れた取り組みも進めていきたいと考えています。
― 本日は誠にありがとうございました。
◆㈱大塚・本社
埼玉県上尾市緑丘2-5-6
℡048-773-1234
以上、日本石材工業新聞 令和5年8月15日号より