薄曇りの隙間から太陽の日差しが少しだけ暖かさを感じさせるような冬の朝、いつもの場所に車を止め線香とお花を子供達に持ってもらい、石畳の参道を歩く。冷たく澄み切った水を手桶に溜め、雑巾を絞り我家の墓所へと向かう。
「お父さん、あそこにあるお墓、赤い色をしていて綺麗だね。」
「そうだね、おうちのお墓は黒と白だけど、他のうちのお墓はいろんな色があるんだね。他にどんな色があるか探してごらん。」
普段は自分のお墓のある所しか見ないが、子供達が興味を持ったついでに墓地の中を変わった色の石捜しの探検をしてみた。
「お父さん、こっちこっち。緑の石があるよ。あそこには青い石もある。」
と子供達はいつもと違ったお墓参りの楽しみを見つけた様であった。
年の瀬も近づき慌しさを感じる季節になりました。今回のお墓の話は石の種類についてお話をさせて頂きます。
先ず、墓石というのは基本的には屋外で雨風に晒されたり、強い日差しを受けますので、耐久性に優れ、風化に強く、変色しない石が適しております。そこで現在では石の中では一番硬い花崗岩の「御影石」が多く使われております。その他には「斑レイ岩」「安山岩」等も使われていますが、いずれも硬質で風化に強く磨くと光沢が出るのが特徴です。
昔は今のような機械も無く、硬い御影石を加工する事が困難だった為に、外柵には大谷石や白河石を使用することが多かったのですが、現在では機械や工具の発達により硬い御影石を三次元的に機械で加工することも容易に出来るようになりました。
次に石の産地を見てみますと、昔は日本全国で石が産出されておりましたが、現在では環境の問題や価格の問題等々で国内の石は墓石に使われる石の2割位の量になってしまっております。それでも、近県で見ますと茨城や福島では安定して産出しておりますし、四国産や静岡産の石は高級品として使われ続けております。また、輸入石材ではインド、中国、韓国など世界各国の石が使用されておりますが、中でも中国産の石はシェアー50%以上を占めていると思われます。中国は広い国土のいたる所で石が産出されておりまして、石の丁場が大きく、安定して石が取れること。また、石目が細かく色が均一な石が取れる事でシェア―を伸ばしてきましたが、最大の理由は、人件費が安いということで、石の価格もそれに比例して安いと言う点にあると思います。
次に、日本人は石目に対する見方がとても厳しい目を持っています。古くからの石文化をもつ国では石と言うのは石目があって、それ程均一でなくてもそれが自然の石の良さであるとされている所も有りますが、日本の墓石と言うのは石目が細かく均一な物でなければならないと言った風潮がありますので、輸入石材の中でも墓石に使用される石は限られてしまう所があります。現在何百という石の種類がある中で、実際に墓石に使用できる石となると、50種類位に限定されてしまいます。
そういった中で、皆様が実際に石を選ぶ時の基準として見ているのは「色」だと思います。昔からの墓所を見ますと、「白」か「黒」の石が目立ちますが、現在では「グレー」や「緑」「ピンク」「赤」「茶」等々個性的な石を選ばれる方が多くなってきております。
いずれにしても、お墓を建てるということは一生に一度あるかないかの事ですので、実際に建っている石を良く見てじっくり選んで頂きたいと思います。
合掌
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