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日本墓紀行「想」第一回 近藤勇

第一回 近藤勇

戒 名

「貫天院殿純忠誠義大居士」
(松平容保の書)

没年齢

35歳

所在地

三鷹市大沢6丁目 竜源寺

最寄駅

JR中央線三鷹駅
小田急バス「車返団地行き」で22分。
龍源寺にて下車徒歩3分。

近藤勇辞世の碑

孤軍援絶作囚俘 顧念君恩涙更流一片丹衷能殉節
雎陽千古是吾儔靡他今日復何言 取義捨生吾所尊
快受電光三尺剣 只将一死報君恩

孤軍たすけ絶えて俘囚となる。顧みて君恩を思えば涙さらに流る。
一片の丹衷よく節に殉ず。雎陽千古これ吾がともがしら。
他になびき今日また何をか言わん。
義を取り生を捨つるは吾が尊ぶ所。快く受けん電光三尺の剣。
只まさに一死をもって君恩に報いん。


 近藤勇の墓は、4箇所にあるといわれている。そのうちのひとつに訪ねてみた。
 JR三鷹駅からバスで20分ほど、狭い道の両側には住宅、商店、病院、学校などが繰り返し現れる。都下の風景だ。思い出したように現れる緑を携えたあたりで帰宅のようにバス停で降りる。目の前にその寺はある。「龍源寺」。
 近藤勇の墓はここにある。流山にて処刑を目にした近藤の娘婿、近藤勇五郎は見張り役に金を握らせ首のない勇の亡骸を掘り起こし、生家宮川家の菩提寺でこの寺に埋葬したと伝えられている。

 辺りは郊外の風景が拡がってる。この地に近藤勇は生まれた。そして眠っている。門前には六地蔵、庚申塔と並び近藤勇の胸像がある。墓所は本堂裏の竹藪を抜けたところにひっそりと佇んでいる。墓地に入るとすぐ右手に近藤勇の墓はある。辺りの墓には近藤の姓が多くある。こんなことにも、都心から一時間とかからないこの地に古を感じる。近藤勇の墓には寄り添うように親族の墓が建っている。自慢の「勇」をはさんで記念撮影のようにほほえんでいる。一礼して後にする。

 寺を背に人見街道を右へ2分ほど歩くと近藤勇の生家跡がある。「近藤勇の産湯の井戸」とある。道を挟んで斜め前に近藤道場・揆雲館が今でも残っている。但しこれは当時の建物ではなく、大正に建て直した道場である。それでも当時の剣に燃えていた近藤らに思いを馳せるには十分か。
 新撰組局長、近藤勇。多くは語られ、語り継がれる人物である。土方、沖田といった一癖、二癖もある連中を束ね京で跋扈し、その後いたるところで武を、志を、全うしようとした幕末の士。強面に時折見える笑顔にはえくぼが刻まれていたという。リーダーとは吸い込まれることであろうか。

 あてのない旅、散策はいいものだ。でもたまには小さな「あて」をつくるのもいい。遠い昔に思いを馳せてみれば目の前の家々は消え、野や川になる。今では不思議なほど身近な多摩の地に近藤は育っていた。今、目の前の道を土方らと走っていたのかも知れない。そして小石川の道場から幾度となく夜明け前に発ち、遠いこの近藤道場に出向いていた。日本の夜明けはそこまで来ていた。その明けと歩を共にすることなく閉じた。享年35歳。


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